平成12年11月上旬から、私は書いた文章を出版してくださる「出版社探し」を始めました。
この出版社探しは困難を究め、周囲の方からのご紹介や、インターネットを活用して出版してくださりそうな会社を個別に当たりました。
最初は新聞等で自費出版を行っているという広告を乗せていたB社とK社、それに獣医のM先生からご紹介していただいたM社に原稿を送りました。
その結果私の手元に届いた結果は、私の想像を絶するものでした。
自費出版ルートでの見積は200万円から300万円近くの金額で、とても私のような貧乏公務員には到底支払えるものではありませんでした。
また出版社によっては自費出版ではなく、協力出版ではどうかというお話もいただきました。この協力出版の場合、著者が初刷り時の本の制作費を負担し、出版社が流通や広告費用等のその他の経費を負担するというかたちで、素人の書いた本でも全国の書店流通に乗せられるレベルの書籍として刊行できる制度です。しかしどちらにせよ自分で初刷りのコストは負担せねばならず、その金額はやはり200万円ほどで、私は1度は出版をあきらめかけました。
しかし、その結果を話した友人達から自費ではなく、是非商業出版のルートを探してみればと励まされました。またせっかくここまで書いたのにもったいないという思いも正直あり、とにかくクリナムの人生を是非記録に残してやりたいという執念にも似た一念から、ダメもとでいくつかの出版社に下書き原稿をお送りしてみました。
何せつてやこねの全くない出版社に対し、何の前触れもなく突然お電話しているため「売り込みですか?」と明らかにいやそうな声で聞かれたり、うちは持ち込み原稿は見ていないからとにべもなくことわられてしまう場合もありましたが、基本的には思ったよりは好意的な反応が多かったようです。
そして原稿を読んでくださった5社中何と3社から出版に前向きな回答が帰ってきたのでした。
まさか全くの素人が書いたものが出版社に取り上げられるはずはないとたかをくぐっていたため、この結果は驚き意外の何物でもありませんでした。
それでなくても現在は出版業界も不況ですし、本を出したいと考える人は多く、盲導犬に関する類書も多数ありましたので出版社など見つかるはずはないと思っていました。また友人の作家からは、出版社にとってしろおとの作家は「鴨が葱を背負ってくるようなものであり、最近の自費出版ブームはそれに加えたれと割り箸まで付けているようなものだともいわれていましたので、この結果は驚き以外の何物でもありませんでした。たぶん時期的に盲導犬に対する関心が高く、5体不満足の台ヒットやバリアフリーという言葉もよく聞かれるようになったことから、社会的な関心も高く障害者にも目を向けようとしている時代背景もあったのだと思います。
その結果せっかく私のような文才のない人間に声をかけてくださった出版社に対し、失礼にもこちらから断らなければならないという事態に発展してしまいました。
私が原稿を送った出版社の選び方は正直いって全くいいかげんなもので、国立国会図書館で受け入れた本の中から過去3年間に盲導犬関係の書籍を発行した出版社を調べ、個別にお電話し、しろおとの原稿を見てくれるかどうかを尋ね、見ていただけるという回答のあった出版社に対し、インターネット経由でメールするか、印刷して郵送する方法で下書き原稿をお送りしました。
私は声を掛けてくださった3社の担当の方と個別にお会いし、どのような本にしたいのかというご意見を聞いた後、最初に声を掛けてくださった実業之日本社さんにお願いすることに決めました。実業之日本社の編集者の方からは、原稿をお送りした2週間後にはお電話をいただき、「お正月休みを使って読みました。私の一存では決められませんがうちで是非本にしたいと思います」という前向きな回答をいただき、そのまた2週間後には出版決定のお電話をいただきました。平成13年2月には出版社も決まりクリナムのお話しは出版へと1歩歩みだしたのでした。
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