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バリアフリー出版の現状における問題点

 

 

  上記でもご紹介いたしましたが、ではなぜ一般文字版に比べて他の媒体がこんなにも販売個数が伸びないのでしょうか?
 もちろん関係各社の営業力の無さや、バリアフリー出版した原作に魅力がなかったと言われてしまえばそれまでなのですが、私なりにいくつか理由を挙げてみたいと思います。
 1.読者層がまだ限られている…上記でも触れたように、バリアフリー出版の対象者は非常に幅広いと考えているのに対し、実際には視覚障害者等限られた人たちにしか利用されていない。
 2.一般文字版に比べ価格的にかなり高価になってしまう…二人五脚では、一般文字版1,500円に対し、点訳版15,000円、音訳版個人4,050円・団体13,500円、大活字版9,000円、マルチメディアDAISY版4,769円であり、かなり高価になってしまう。点字版のように視覚障害者本人が価格差補償制度を利用して購入する場合のみ原本価格と同じ1,500円で購入できるが、他の媒体ではそのような制度事態存在せず、すべて受益者負担になってしまう。
 3.価格差補償制度の認知不足…視覚障害者の間でも点字図書の価格差補償制度についてあまりよく知られていない。
 4.視覚障害者自身が本を買うという文化に乏しい…今まで視覚障害者が本を読みたいと考えた場合、前述の通り点字図書館や公共図書館、ボランティアグループ等に制作を依頼していたため、本を借りるという文化はあっても、私も含め本を買うということがほとんどなく、本は借りるものと思っている節がある。
 5.PR不足…拙著については日本初の「バリアフリー同時出版」ということもありマスコミ等にも大きく取り上げられたが、その後はなかなか一般のマスメディア等に取り上げられる機会が少ない。また読書障害者に対し、直接情報が提供できる機会が少ない。
 6.制作側の組織・基盤の弱さ…現状でバリアフリー出版を実践している関係各社は、小規模な民間企業やNPO等のボランティアグループであり、公的な公共図書館や点字出版所等の協力を得られていない。また関係各社のネットワーク化や連携もうまくできていない。
 7.読者ニーズの把握不足…現状でははたして読者が本当に読みたいジャンルの本、利用しやすい媒体が選択できているかが不安である。
 8.市場の狭さ…販売の対象者が実質的に障害者サービスを行っている公共図書館や点字図書館等に限られており、なかなか販売個数に結びつかない。
 9.図書館等の資料費の減少…未曾有の平成不況により公共図書館や点字図書館の資料費が減少しており、販路の拡大も困難である。
 10.販売窓口の不足…現状では一般文字版を除き販売窓口が関係各社の直販に限られており、実際に各媒体を手に取って見る機会が少ない。
 11.利用者の分散…読者のニーズに併せて多くの媒体を用意すればするほど、購入者が分散されてしまうという懸念がある。
 12.モラル不足…点字出版されている本でも点訳ボランティアにより点訳されていたり、音訳されているケースが見られる。また1セット購入したものを、複製して貸し出しているケースもある。
 13.過大な著者への負担…各媒体のPR活動はもちろん、制作時の日程管理や連絡調整等すべて著者の力に頼ることが多い。
 14.各媒体の制作コストの負担者…現状では各媒体の制作・販売にかかるコストはすべて関係各社の負担でまかなわれているが、正直採算ベースにならず、利益に繋がらない。各媒体の制作コストについては、原本の出版社が補償する等新たな枠組みが必要である。
 以上「バリアフリー出版」を実践してきた結果から現状での問題点について列挙してきましたが、今後も「バリアフリー出版」を継続的に実践していくためには、解決しなければならない問題が山積しています。
 正直私自身今後どのようにバリアフリー出版を発展させていったらいいかかなり迷っているというのが率直な気持ちです。
 今後より読者の方が本当に必要とされているニーズやジャンルの本について的確に把握し、よりよい形で是非今後に繋げていきたいと考えています。またこれまでの実践例のような素人の作品ではなく、プロの作家の方の作品についても「バリアフリー出版」を是非実践できればと願ってります。
 そしてまた各媒体の価格のバリアフリー化を実現するため、多くの皆さんのご協力をいただきながら、点訳書のみに適応されている「価格差補償」の制度について、他の媒体にも拡げていけるような働きかけを行っていければと思っています。

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