私にとって1頭めのアイメイト(盲導犬)クリナムとの出会いは、何の変哲もない私の人生のなかで、大変大きなものでした。またいろいろな意味で私の人生を変えるきっかけにもなったのです。
その最たるものが実業之日本社からのクリナムの手記の出版でした。
普通の人であれば一生のうち本を出版するのは大変稀だと思いますし、それはもちろん私にとっても同じことですが、そおいういみでは「クリナム」がいたから本を出版できたともいえます。
ただ私は綺麗ごとをいうつもりは在りませんが、自分の売名行為のために本を出版したかったわけでは全くありませんでした。
ではなぜ本を出版したかったかというと、まず第1に私も含め、クリナムのことをだんだん忘れていってしまうことが正直いって悲しかったからです。
人は嬉しいことも悲しいことも忘却できるからこそ生きていけるのだとは思いますが、クリナムのことをそのまま忘れてしまうのは大変残念であり、彼女が一生をとおして伝えたかったことを何らかの形で表現し、彼女の一生を記録として残してやりたかったのです。
それが私のために一生涯をとおして尽くしてくれたクリナムに対し私ができる最後の供養であり、感謝の気持ちの表現だったのです。
また盲導犬というとどうしても犬が目が見えない気の毒な使用者を連れて歩いてくれる偉い犬となってしまいがちですが、私としては使用者とともに高め愛、助け合って盲導犬が仕事をしている事実や、時には失敗もすれば、叱られることもある、当たり前の盲導犬との生活の実態を知っていただきたかったのです。
そのような意味で私はクリナムの生きた記録をまとめ、いろいろな方に正しい盲導犬への理解と協力をお願いしたかったのでした。
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