私たち視覚障害者が本を読みたいと考えた場合、どうしても点訳や朗読のボランティアの方または図書館等に制作を依頼しなければなりません。点訳については著作権法第37条の(点字による複製等)の項で「公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。」と規定されており、営利団体、非営利団体を問わず許諾の必要がありません。また音訳については、同じ著作権法第37条の3項で「点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設で制令で定めるものにおいては、もっぱら盲人向けの貸出の用に供するために、公表された著作物を録音することができる。」とあり、点字図書館が音訳図書を制作する場合のみ例外的に著作権許諾が必要ありません。しかし公共図書館やボランティア等の非営利団体が音訳や大活字、DAISY版の資料を制作する場合には、著作権法に特に規定がないため、一般のルールにもとづき著作権者の許諾が必要です。ましてボランティア団体ではなく、営利団体が、点字を除くそれぞれの媒体を制作する場合には、通常の二次出版の際と同様、著作権者の許諾のほか、ほとんどの場合、出版社の許諾が必要であり、それぞれ出版契約により、一定の著作権料または出版権料が支払われるのが通常です。また最終的に著作者が快諾していただけなければ、どんな良い本、ベストセラーになっている本でも、視覚障害者等活字による読書の困難な人には全く読むことができません。著作権法37条の規定では、基本的に視覚障害者は点字を使用することが前提のように考えられがちですが、実際には全国約30万人の視覚障害者のうち、点字を使用しているのはその約1割に当たる3万人程度にすぎません。点字を使用していない9割以上の視覚障害者は、朗読テープや大活字、DAISYの資料を使用していることになります。以上のような理由から、通常私たち視覚障害者が本を読みたいと思った場合、著作権許諾と実際の作業等で順調にいって3カ月、場合によっては半年以上待たされる結果になってしまいます。私はこのような自らの経験から、一般文字の出版に併せ、点訳版や音訳版、大活字版等を同時に出版できるようにするため、専門会社に、制作・販売をお願いし、出版社側の協力として二次出版権の放棄と、ゲラの段階での紙と印刷用のデータの提供、それにPR等を依頼しました。
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